スペクトラル三国志
第3日目(前編)
〜前回までのあらすじ〜
いよいよ頭角を現し始めたオウリン。
西涼の馬騰軍の元で戦功を挙げ、長安の太守に任じられる。
また、マリル、大蛇丸と脱落していくスペクトラル勢の出世レースでも、アゼレアを抜いて遂にトップに踊り出た。
しかし、その華やかな活躍のかたわら、馬騰軍全体に危機が迫ってきていた・・・。
◆オウリン、武都陥落の報を受ける
ふふふふ。今回の武術大会は自信があるよ。なにしろ武力も94まで上がったからねぇ。
最近ワシの喋り方がオウリンに近くなってきた気がして怖い。直さねばならん。
さて。
オウリンは兀突骨、張嶷を破り、決勝にこまを進めた。
今度こそ優勝を!と気合を入れて望んだ決勝戦だったが、ジャドウにわずかの差で敗れた。
長安を占拠し、太守に任命されたオウリンは、民心をなだめ、まず防備をととのえ、内政や、武器生産などに励んでいた。
とにかく、この長安は中原に打って出るためには、どうしても不可欠な玄関口。
また逆に、西涼を守るためにも東からの敵の侵入を防ぐための防衛拠点としても欠かせない交通の要所であるため、それだけオウリンに任せられた責任は重いのである。
そのため、オウリンが長安に入ってからは、いまや天下人となっている孫権も迂闊に長安へ軍を進めるわけには行かない状況だった。
孫権が「オウリンがいる限り長安には手が出せぬ。」と武田信玄みたいなセリフを残したかどうかは定かではない。
ともかく、約2年ぐらい平和な時期が続いたわけである。
さて、平和を満喫していたオウリンは中秋の名月をめでる宴なんぞを開いてのんびり暮らしておった。
張嶷:
「わははは。長安の防備は万全。オウリン殿がおる限り、この長安には手が出せぬと孫権も歯噛みしておろう。」
楊秋:
「まったくじゃ。オウリン殿万歳。がははは。」
なんて感じで浮かれていたら、部下が顔色を変えて飛び込んできた。
部下:
「一大事でございます!!長安が陥ちぬとみた孫権軍が南より武都に侵入!!武都は呉の手に落ちましてございます!!守将の韓遂、程銀、馬玩将軍らはいずれも投降した由!!」
せっかく部下におだてられていい気分になっていたのに、中断である。もうちょっと悦にひたっていたかったのに。
しかし、この事件はあまりにも重大だ。
武都が突破されたという事は、馬騰の本拠地涼州まで、ほとんど障害らしい障害もなく突き進めてしまうと言う事である。
いくらオウリンが長安で頑張ってても、本拠地が陥落したらもはや国としては機能しなくなってしまう。
まあ、要するにだ。前からの攻撃にずっと備えていたら、後ろから思い切りぶん殴られたような感じである。
この国の防衛体制は、長安、武都の2都市に戦力を集中させて、中身はほったらかしという、まるで生卵みたいな体制だったので、このままでは一気に手薄の国内を孫権軍に踏み荒らされてしまう。
軍師ジャドウはそれまでオウリンと共に長安にいたのだが、背に腹は変えられぬと至急天水の防衛に向かった。
◆オウリン、曹操を破り漁夫の利を得る。
長安の戦力が低下したのを確認したかのように、曹操が軍勢を起こした。
曹操は自ら大軍を率いて、目の上のたんこぶである劉備をまず討ち取ろうとした。
劉備が敗れたら、長安は一気に魏と呉の2大国と国境を接する事になる。オウリンは迷うことなく劉備に援軍を派遣した。
援軍に派遣した将は、ホウトク、張嶷、楊秋、成宜、楊懐の5人。
オウリンが彼らに出した指針としては、
敵の主力は劉備軍に任せる。
敵の補給路を断ち、士気を下げる。
という基本スタイル。
で、敵との距離を中距離に保ち、敵がトドメをさせそうになったら騎馬隊で突撃を仕掛け兵を減らさず敵の武将だけさらっていくという、異民族作戦である。
諸将はその通りによく動き、張肅、楊泊と立て続けに捕獲。
さらに、補給路を断たれたことにより士気が激減して戦どころで無くなり慌てて引き返そうとした曹操をホウトク、成宜らが退路を断ち曹操の本体を全滅させた。
曹操:
「おのれおのれおのれオウリン!!やはりあの時、我が配下に無理やりにでも入れておけば・・・!!」
ホウトク:
「むうう。さすがは曹操の爪黄飛電(字忘れた)!!とても追いつけぬ!!」
曹操は取りこぼしたが、漁夫の利をさらい、曹操軍の張肅と楊泊の二人を配下に加えた。
そして、次の月。
主君・馬騰から使者が訪れる。
この使者がオウリンの人生を大きく変えていくのであった。
◆オウリン、軍師就任。
使者:
「オウリン様にはご機嫌麗しゅう。」
オウリン:
「用件は?」
使者:
「はっ。馬騰様が、オウリン様を軍師に任命したいとの仰せにございます。至急、本国の武威にお戻り下さいませ。」
ついに軍師に指名された。
軍師になったという事は、言うまでもなくこの国のナンバー2にのぼりつめた事になる。しかも、いよいよ自分の意志で各国の内政、軍事に口出しできるようになるのだ。
要するに、内閣総理大臣のようなポストやね。
オウリンは馬騰のいる武威に移動。長安太守の後任は張嶷が務める事になった。
―――武威
馬騰:
「本日を持って、オウリンを軍師に任命する。」
オウリンが軍師になった事により、軍師の座を剥奪されたジャドウの悔しそうな顔が印象的だ。
オウリン:
「フフッ・・・。」
勝った。ぽっくんジャドウに勝ったぶぁい、へけけ。
馬騰:
「我が国は武都を孫権に奪われ非常に危機に立たされておる。そこで、国の命運をお前に託す。なんとしても武都を奪い返してくれ。」
オウリン:
「孫権はあたしらに上等を切ったんだ。武都を取り返すだけじゃ面白くないねぇ。利子をつけて返してもらうよ。」
そう言って不敵な笑みを浮かべるオウリン。その迫力に、馬騰以下そこに居合わせた全員が凍りついたという。
馬騰:
「(ち、違う!これは今までのオウリンではない・・・。こいつはとんでもない怪物に成長している!!)」
オウリン:
「じゃあ、これから色々と準備もあるから、これで。」
きびすを返し悠然とかつ堂々と城を出るオウリン。
オウリン:
「(決まった・・・。怖すぎるぐらい決ま)あぷぱ!!」
前方不注意。柱にディープキスして転倒した。
馬騰:
「(ああ、良かった。いつものオウリンだ。)」
諸将は胸をなでおろした。
◆オウリン、部下の統制に困る。
オウリン:
「攻撃目標は、武都じゃない。漢中だ!!」
オウリンの発言に、みながどよめく。
オウリン:
「漢中を抑えておけば、武都如き、いつでも取れる。それに漢中は蜀への玄関口にもあたるだけでなく、さらに荊州へ進出するためにも絶対に抑えておかなければならない拠点。さらに、ここを奪えば、孫権軍の補給路も断てる。」
攻撃目標を漢中に定めたオウリンは当初の予定としては、長安の軍勢で漢中へ攻め込み、長安がその間に攻められたら、この前の戦いで援軍を出した事を名目に劉備から援軍を出させることでしのぐ予定だった。
ところが。
マリマー:
「オウリン。どうも功を焦った張嶷が、勝手に宛に攻め込んでしまったニャ。」
オウリン:
「なっ、なにぃ!?」
マリマー:
「張嶷本人は長安に残ってるけど、他の武将全てが宛の防衛に当たってるから、漢中を攻める軍勢がなくなったニャ。」
オウリン:
「何考えてんだあのドアホ!!今、宛なんか抑えても前線が伸びるだけだろうが。劉備が裏切って長安を奪われたら終わりだぞ!!」
オウリンは必死で自由に動ける戦力を探し、馬騰をはじめとした後方に残った戦力と、宛のホウトクを長安に呼び寄せ、第2の漢中攻略軍を編成した。
マリマー:
「オウリン、また一大事ニャ。」
オウリン:
「今度は何?」
マリマー:
「馬超とジャドウが勝手に武都に攻め込んだニャ。」
オウリン:
「みゃー!!」
馬騰:
「あ、それ、ワシの指示。」
オウリン:
「あ、あんたねぇ・・・。」
やはり、馬超の軍勢は敗北。馬超やジャドウや馬岱らは無事帰ってきたが、馬鉄、馬休が逃げ遅れて二人とも首を斬られた。
オウリン:
「あんた、ちゃんと下調べしてないんか!?武都に孫権軍は今10万近くいるんだよ!?7〜8万で勝てるわけないじゃん!!」
馬騰:
「ちょほー。休〜、鉄〜(泣)!」
オウリン:
「これに懲りたら、もう勝手な動きはしないように。」
馬騰:
「分かりました。」
マリマー:
「クーデター成功だニャン。」
オウリン:
「人聞きの悪い事言うんじゃないよ。」
様々な邪魔が入ったものの、いよいよオウリンの漢中侵攻軍が出発した!
総大将馬騰、参軍にオウリン。以下11万の軍勢である。
◆オウリン VS 陸遜
漢中の太守は呉のナンバーワン武将陸遜であった。
やはり、重要拠点だけに、孫権も守りは抜かりない。
陸遜以外の武将はいずれもパッとしないが、それだけ陸遜が信頼されていると言う事だ。陸遜さえいれば漢中は安泰なのである。
しかし、オウリンには勝算は充分にあった。なぜなら、今のオウリンは、もはや陸遜とぶつかり合っても引けを取らない、いや、むしろそれを上回る能力にまで成長していた。
とすれば、後の戦力、つまり馬騰、張嶷らの武将の差で押し切れるからである。
陸遜:
「オウリン。まさかお前とこうして戦う時が来るとはな・・・。容赦はせぬぞ。」
孫権軍6万、馬騰軍11万の軍勢は堂々と向かい合った。孫権には武都から援軍が向かってきているようなので、それまでに有利な地形をとっておかなければならない。
まず、手始めの拠点を総がかりで奪う。
守将が誰だったか忘れたけど、まあ大した武将ではなかったので、あっさり落ちた。
ここからが重要である。大きな河を渡らなければならない。
ここに敵兵が潜んでたり、援軍が駆けつけられると大変な被害をこうむる。
そのため、水軍をもつオウリンが河に待機し、全軍の渡河を安全に推し進めた。
全軍が渡河を終えたら、陸路は馬騰に任せ、オウリンは河づたいに、陸遜の本陣を目指す。
オウリンが河の合流地点に差し掛かったところで、敵の援軍が現れた。
オウリン:
「きたな!」
敵の援軍はオウリン一人ですべて相手する。幸い敵はこの前馬超たちが武都を攻めていたおかげで戦力が疲弊した状態であった。
しかも援軍の顔ぶれを見てみると、韓遂や馬玩、程銀といった、武都を攻め取られた時に呉に降伏した武将達。
つまり水軍を持ってないやつらだったので、オウリンにとってはまったく楽な戦いであった。
オウリン:
「ぎゃははは。戦功稼ぎ放題だ!!それそれ。」
ただでもオウリンの方がはるかに強いのに、そのうえ水軍能力や蒙衝を持っているオウリンとの差は歴然だった。敵の攻撃でオウリンの部隊は数百人ぐらいの被害しか出ないのに、敵はオウリンのカウンターで3000〜4000の兵が倒れていく。
韓遂:
「だ、ダメじゃダメじゃ!!水上ではオウリンにはかなわん!陸に逃げろ!!」
オウリン:
「そうはさせないよ。それ、「連環」!」
あらかじめ、策にストックしておいた「連環」がここで役立った。この策略によって敵軍は水上ですべて足止めを食ってしばらく動けない状態になった。
こうなれば、あとはオウリンのサンドバッグにすぎない。
次々と敵部隊は壊滅。念のため、兵糧拠点にジュンシンを残しておいたのだが、必要なかったようだ。
海戦は馬騰軍に軍配が上がったが、陸路から進んだ本隊は苦戦していた。
まあ、次から次と陸遜が仕掛けた罠にかかるわ、陸遜の計略にコロコロ引っ掛かって、混乱状態に陥るわ。
しかも陸遜とぶつかり合うと馬騰以外の武将は全て押される始末。
オウリン:
「囲め囲め!陸遜は「無双」は持ってない!!」
陸遜の奮戦振りは敵軍も天晴れと舌を巻くほどのものであったが、いよいよ戦力の差が目に見えるようになってきた。
そのうえ、次々と味方の拠点は陥落し、軍勢は壊滅していくため士気もどんどん下がる。
さらに、オウリンが策の「罵声」で着実に呉軍の士気を低下させていくものだから、遂に陸遜も支えきれなくなった。
最後は馬騰の突撃で壊滅し、陸遜は捕虜となった。
◆オウリン、陸遜を説得する。
さて、漢中はこうして馬騰軍の手に落ちた。
韓遂なんぞは、おそらく嘘泣きでもして馬騰に許してもらったのだろう。
問題は陸遜である。
何よりオウリンにとって、陸遜は恩師でもあり、親友でもある。死なせたくない。
ただ、陸遜は義理堅い武将なので、孫権を離れ馬騰についてくれるとは限らない。
そのため、オウリンは必死で陸遜を説得、ついに陸遜は折れた。
忠義をオウリンへの愛が上回ったということか。そりゃあ、虎に襲われるたびに必ず見舞いに来たほどやからな。
さて、オウリンはここで安心しておくわけにも行かない。長安ががら空き。しかも劉備との同盟がタイミングバッチリで切れた。
アゼレア:
「劉備様、長安は中国でも有数の豊かな国。今を逃してはなりませぬ。」
劉備はチャンスとばかりに長安に攻め込んできた。
オウリン:
「抜かりは無いよ。」
オウリンはわざと漢中攻略軍にホウトクを入れておかなかった。
そのホウトクを長安に移動させ、馬超のもとから、馬岱も備えさせておいた。
あとは、漢中から援軍を出せば十分乗り切れる。
馬騰は漢中ではなく宛から援軍を出させたが、まあ結果は同じ事。あっさりアゼレアの企みは崩れた。
こうなると、今度は曹操、馬騰に挟まれて苦しむのは劉備である。
次の月に慌てて和睦の使者を馬騰によこしてきた。
まあ、ウチにとってもまだ劉備との同盟は必要なので、承諾した。
オウリン:
「使者はアゼレアだったよ。青い顔してたねぇ、いい気味さ。」
マリマー:
「そんなアンタも青い顔する羽目になるニャ。」
オウリン:
「なんでよ?」
マリマー:
「オウリンより知力の高い陸遜が部下に加わったから、このままだと陸遜が軍師になって、オウリンは軍師外されるニャ?」
オウリンは真っ黒になった。
マリマー:
「予想以上の反応(笑)!!」
オウリン:
「だーっ!!やばいやばいやばいやばい!!今すぐ陸遜のところへ行って知力をあげてくる!!」
こうして、かろうじてオウリンの軍師職としてのクビは繋がったのであった。
なお、他のキャラの動きとしては、ヒロ、リトルスノーの二人は孫権に鞍替えしておりました。
後編に続く