もんちっち劇場






1/22 (木)



 黒星山:

 「あっ、メイたんだ。メーイーたーんー!」


 鳴隼:

 「・・・・・・・・・。」



 黒星山:

 「メイたーん!」


 鳴隼:

 「
ふらふら・・・


 黒星山:

 「!?」


 
どさっ。


 黒星山:

 
煤i○□○;;;)め・・・、メイたん!?どどど、どうしたっスか!?メイたん!メイたん!!」


 鳴隼:

 「・・・・・・・・・。」



 黒星山:

 「うわっ!す、すごい熱っス!ど、どどど、どうしよう・・・!と、ともかく部屋に運ぶっス!!」






 白星山:

 「おや、どうしたんだい、黒星山君。そんなに慌てて。」


 黒星山:

 「うっ!白星山・・・!い、今は急いでるっス!失礼するっス!」



 白星山:

 「んー、何だぁ、そのガキは・・・。はっ!?さ、さてはお前・・・。」


 黒星山:

 「???」



 白星山:

 「おい、勘弁してくれよ。そりゃ、確かにお前の好きだった幸子
(黒星山が憧れていた親方の娘)が、オレの女房になっちまって自暴自棄になるのは分かるよ。ああ、かわいそうな男だ。同情するよ。」


 黒星山:

 「むむっ!」



 白星山:

 「けどな。そんなガキを
誘拐監禁するところまで落ちてしまうとは、正直ガッカリだよ。お前のせいで三子山部屋の名が汚れたら、他の力士まで迷惑かかるんだぞ。」


 黒星山:

 「
ぶっ!あ、アホか!!(○□○;)そんなんじゃないっス!!と、とにかく空いてる部屋はないっスか!?ボクは布団用意するから、誰か氷嚢頼むっス!!」


 白星山:

 「ちっ・・・。おい、赤星山、おめぇ手伝ってやれ。」


 赤星山:

 「ちぇ、何でオレが・・・ぶつぶつ・・・。」






 美咲:

 「おい、クソチビがぶっ倒れたって本当か!?」


 銀星山:

 「うわ〜、女の子だ、女の子だぁ〜。こんな相撲部屋に女の子が来るなんて、ぼかぁ、感激だなぁ。」



 白星山:

 「何言ってんスか、先輩・・・、みっともない。

 おい!勝手に入ってくるんじゃない!ここをどこだと思ってるんだ!」



 美咲:

 「邪魔だ。どけ。」


 白星山:

 
「うっ・・・!」


 三子山親方:

 「白星山、そう目くじらたてるな。あー、お嬢さん、お見舞いかね?」



 美咲:

 「まあ、そんなトコで。」


 黒星山:

 「おお、番長!待ってたっスよ!こっちっス!他のみんなも集まってるっス!」






 黒星山:

 「いやー、ボクは嬉しいっス。みんながこんなにメイたんを心配して集まってくれるとは。メイたんの人望も捨てたモンじゃないっスね。」



 オニキス:

 「馬鹿を言え。コイツがくたばるのを見物しにきただけだ。」



 藤次郎:

 「そうそう。千載一遇のチャンスだからな。持ち直しそうだったら、スキあればトドメを刺そうと・・・。」



 麗羅:

 「おっほほほほ、この顔よ。このクソガキのこの表情を見たかったのよ、おーっほっほっほっほっ!!」



 鳴隼:

 「・・・・・・ごほごほ。」



 黒星山:

 「・・・・・・・・・ひ、酷いっス・・・。」



 クイーン:

 「フン、恨みを買うようなことばかりしているからな。当然の報いだろう。」



 黒星山:

 「く、クイーンさんまで・・・。」



 ベータ:

 「そうそう、バチが当たったんだよ。いやー、神様はよく見てらっしゃる!」



 美咲:

 「まー、コイツにゃ良い薬だろ。」



 明美:

 「病気が薬だなんて、シャレが効いてるわね。」



 黒星山:

 「(そ、想像以上に嫌われてるっス・・・)」



 藤次郎  オニキス

 「♪ 死ね 死ね 死ね死ね死ね死ね死んじまえ〜 ♪」


 明彦:

 「いくら何でもかわいそうでしょ・・・。」



 神田:

 「しっかし・・・デブ以外、誰一人励ましの言葉をかけてねーな。」


 鳴隼:

 「ごほっ・・・ごほっ・・・」



 美咲:

 「で、容態はどうなんだ?」



 ためごろう:

 「ふぇ〜ん。それがおかしいんですよぉ。万能のはずの、私のエンゼルフェザーや、エープさんの白魔法でも効果がないんですぅ。」



 とるこ:

 「打つ手なしってヤツだな。」



 うべべ:

 「もうすぐ、鳴隼さんの知り合いという医者が駆けつけてくるはずズラが・・・。」



 どすどすどすどすどす!


 ベータ:

 「お、来たか?」



 医者:

 「いやーっはっはっはっ!お待たせしました!わたくし、医者のフェンフェンでございます!」



 黒星山:

 「さ、早速診断して下さい!先生!」



 フェンフェン:

 「ふむ・・・。」



 ためごろう:

 「神力も魔法もきかないんですよぉ。」



 フェンフェン:

 「ふむ・・・。なるほど・・・。分かりましたよ!」



 鳴隼:

 「ごほッ・・・ごほッ・・・!!」



 美咲:

 「聴診器も当ててないのにか?」



 フェンフェン:

 「ふっふっふっ。私はこの道30年のベテランですよ?」



 エープ:

 「いや・・・、そーゆー問題じゃないよーな。」



 フェンフェン:

 「この病気は、かの伝説の病
『眉毛風邪』です!」


全員:

 「まゆげかぜ〜!?」


 フェンフェン:

 「はい〜。どういうわけか、眉毛の太い人がよく掛かる病気でございまして、ハイ。ケンシロウ(北斗の拳)、新井聖美(卒業)、OZ(ZMAN)、野原しんのすけ(クレヨンしんちゃん)、星飛雄馬(巨人の星)なども苦しんだと言われる難病でございます。」



 とるこ:

 「嘘だろ、コラ。」



 フェンフェン:

 「この病気を治すためには、方法はひとつしかありません。」



 とるこ:

 「シカトしてんじゃねーよ。」



 黒星山:

 「そ、その方法とは!?」



 ベータ:

 「眉毛をそってしまおう!」



 フェンフェン:

 「ちっちっちっちっ・・・。そんな事しても無駄です。体質の問題ですから。眉毛の太い人がたまたまそーゆー体質だということで眉毛風邪と呼ばれてるだけで、直接眉毛が原因じゃないんですよ。」



 クイーン:

 「では、どうすればいい。」



 フェンフェン:

 「ウペペペペサンケ山の頂上に咲くといわれる伝説の漢方、ケロリ花を取ってきて下さい。どんな難病をも治す秘薬です。それはたとえ人間以外でも、獣だろうと、エルフだろうと、ドワーフだろうと、ギアだろうと、イーデアだろうと!」



 エープ:

 「ウペペサンケ山?北海道の?」



 フェンフェン:

 「ノンノンノン。ウペペサンケ山ではありません。ウペペペペサンケ山です。ここから北へ少し行ったところにあります。」



 黒星山:

 「そ、それを飲ませれば治るっスね!?」



 フェンフェン:

 「はぁい。」



 黒星山:

 「よ、よーーーし!じゃあ早速行くっス!!さあ、みんな!出発ーっス!!」



 し〜ん。


 黒星山:

 「・・・・・・・・・れ?どうしたっスか、みんな?」



 藤次郎:

 「けっ。誰がこんなクソガキのために、わざわざ山登りなんてするかよ。」



 オニキス:

 「そうだとも。こんな奴死んでしまったほうが世の為だ。このっ。」



 藤次郎:

 「おお、オレも蹴らせろや、ひゃははは!」



 げしげしげしげしっ。


 鳴隼:

 
「ごほっごほごほっ!」


 黒星山:

 「やめるっスーっ!!相手は病人なんスよーっ!!」



 どかっ!


 オニキス:

 
「ぐはあ!」


 藤次郎:

 
「いってぇええ!何しやがんだ、クイーン!」


 クイーン:

 「よく聞け、脂肪の固まり。この見苦しい二人は特別としても・・・ここにいる全員、コイツに対して良い感情は持っておらん。」



 鳴隼:

 「・・・こふっ・・・げほっげほっ・・・!」



 クイーン:

 「助けたければ、貴様一人で行くんだな。」



 黒星山:

 「そ、そんな・・・。」



 ベータ:

 「まあ、頑張ってくれたまい。少しはポイント稼げるんじゃねーの?」



 美咲:

 「さて、じゃあオレも帰るかな。」



 黒星山:

 「ば、番長まで・・・。」



 とるこ:

 「けけけー。さー、帰ってゲームの続きだ。」



 うべべ:

 「と、とるこ〜、待ってけれ〜。」






しーん。



 フェンフェン:

 「だ・・・、誰もいなくなっちゃいましたね・・・。」



 鳴隼:

 「ごほっ・・・ごほっ・・・。」



 黒星山:

 「ぐすっ。・・・・・・酷いっス・・・。メイたんがこんなに苦しんでるというのに・・・。みんな、薄情すぎるっス・・・。これじゃ、メイたんがあまりに可哀想っス。」


 鳴隼:

 「・・・・・・・・・。」



 黒星山:

 「待ってて、メイたん。たとえ世界人類がみんな敵に回っても、ボクだけはメイたんの味方っス!絶対、そのケロリ花とやらを持ってくるっスよ!!」


 白星山:

 「おい、黒星山。稽古の時間だ・・・
うわっ!

ドン!!



 黒星山:

 「ボクは急用ができたっス!!稽古は休ませてもらうっスーっ!!」


 白星山:

 「いっつ〜・・・。あのヤロー・・・覚えてろ・・・。」



 三子山親方:

 「不意だったとはいえ、白星山をここまで吹き飛ばすとは・・・。」



 金星山:

 「なんで、アイツこんなぶちかまし持ってんのに勝てねぇんだろーなぁ。」






 美咲:

 「親父ー。」


 みさきパパ:

 「おう?どーした。」



 美咲:

 「バイクのカギどこやった?」


 みさきパパ:

 「あー、そこの棚ン中だ。どっか行くのか?」



 美咲:

 「ちょっと山登りをな。」


 みさきパパ:

 「?」






 ベータ:

 「おっし、じゃあ行ってくらー。」



 エープ:

 「兄貴、行く事ないよ。」


 ベータ:

 「・・・・・・・・・。」



 エープ:

 「・・・・・・・・・。」


 ベータ:

 「・・・・・・エープ。確かに、鳴隼には随分と煮え湯を飲まされとる。

 ・・・だけどな、兄ちゃんはこれでも勇者なのだよ。」



 エープ:

 「・・・。」


 ベータ:

 「人が苦しんでる姿を見て心が痛まなくなっちまったら、もうヒーローの資格なんてねーんだ。」



 エープ:

 「兄貴・・・。か、カッコいい〜・・・。
(じ〜ん)


 ベータ:

 「というわけだ!晩飯はカレー用意しといてくれ!んじゃなーっ!!」



 エープ:

 「・・・・・・はっ!?あ、兄貴・・・!あ〜あ・・・行っちまった・・・。」


 物陰から様子を見てたこのみ:

 「お、王子様ァ・・・。やっぱり思ったとおりの人だわ・・・。うるうる。」



 プニョプニョ:

 「プニョー。」






 ベータ:

 「ほっ、ほっ。ちぃー、結構距離あんなぁ。・・・・・・ん?」



 
ブオン!!


 美咲:

 「よう。軟派ヤロー。」


 ベータ:

 「おー?なんだ男女、お出かけかね?」



 美咲:

 「まー、ちょっとツーリングをさ。山にでも行ってみよっかな。」


 ベータ:

 「奇遇だね。オレもハイキングしたくなってさ。せっかくだから乗っけてくんない?」



 美咲:

 「やなこった。オレは2ケツはしねー主義なの。」


 ベータ:

 「ちぇ〜、ケチ!」



 美咲:

 「じゃーな、オレは先に行ってるぜ!」


ぶおーん!!


 ベータ:

 「く、くそーっ!負けてたまるかーっ!!ベータ君ダーッシュ!!」



 美咲:

 「おおっ!?や、やるじゃねーか!バイクと並走してきやがるとは!」


 ベータ:

 「なーはははー!オレはガキんときから負けず嫌いでなーっ!一番乗りで山に登るんだ!」



 美咲:

 「上等!相手にとって不足はねーぜ!」




 しかし、そのウペペペペサンケ山に異変が生じている事に、まだ誰も気付いてはいなかったのだった。





1/24 (金)



 続き。



 ベータ:

 「この山じゃねーか?」



 美咲:

 「ん?あれは・・・。」


 明彦:

 「あ、美咲さん。」



 神田:

 「やっぱり来たな。おめーの事だから、きっと来ると信じてたぜ。」



 美咲:

 「悪党でも見殺しにしちゃ寝覚めが悪いからよ。」


 ベータ:

 「ん?・・・この山どうやって入るんだ?」



 明彦:

 「まず谷を越えなきゃいけないんだ。」



 美咲:

 「橋は?」


 神田:

 「そ、それがなぁ・・・。」



 ベータ:

 「?」



 明彦:

 「なんか近所の人の話だと、奇声を上げながら変な力士がつり橋を渡ろうとして、つり橋が切れて谷に転落しちゃったらしいんだけど・・・。」



 美咲:

 「・・・・・・・・・。」


 ベータ:

 「黒星山、成仏するんだぞ。」



 明彦:

 「一応レスキュー隊は要請したけど。」



 ベータ:

 「うーん、他に渡る橋はないのか?」



 明彦:

 「あんまりこの山に入ろうとする人は居ないらしくて・・・。この谷を越える橋はあれしかないんだって。」



 神田:

 「山の反対側に回るしかねーな。」



 美咲:

 「今から、んな事してたら頂上につく頃には日が暮れてケロリ花探しどころじゃなくなっちまう。」


 ベータ:

 「あのバカ、たった一つの道を破壊しやがって。」



 美咲:

 「しょーがねーなぁ。」


 明彦:

 「ど、どうするの?」



 美咲:

 「飛び越す。」


 神田:

 「い!?この谷をか!?100メートルはあるぞ!」



 ベータ:

 「アンタ無茶苦茶やな!」



 美咲:

 「根性出せばなんでもできる。アキ、オレのバイク頼んだぞ!」


 
軽々と谷を飛び越えた。


 神田:

 「す、すげー!!マジで飛び越えやがった!!」



 ベータ:

 「人間じゃねえ!!」



 美咲:

 「黒星山は任せたぜ。オレはケロリ花だっけ?アレ取ってくる。」


 ベータ:

 「ま、待った!」



 神田:

 「?」



 ベータ:

 「美咲に出来て、オレに出来ねーはずがない。あんな男女に負けてたまっかー!」



 だっ!


 ぴょーん。すたっ!



 神田:

 「うおーっ!?アイツも飛び越えやがった!」



 明彦:

 「二人ともどーゆー跳躍力してるの!?」



 ベータ:

 「なーははは!見たか!愛と正義の大勇者ベータ様のこの底力!」


 美咲:

 「モタモタしてると置いてくぞ。」


 ベータ:

 「うわー、ノーリアクションかい。」



 
二人は山の奥地へ進んでいった。


 明彦:

 「でも、この距離を飛び越えていくなんて、やっぱりあの二人は凄いよね・・・。・・・あれ、神田君どうしたの?」



 神田:

 「ぶつぶつ・・・
(妄想中)


 ベータ:

 『へっへっへっへっ!男と女が二人きりで人気のねートコに来るんだから覚悟はできてんだろォ!』



 美咲:

 『きゃー!いやー!やめてーっ!助けて、おとうさーん!』



 ベータ:

 『なーははは!つり橋も落ちたし、泣いても叫んでも助けはこねーぜ!!』



妄想終わり



 神田:

 「
(ぶちっ!)・・・うおおおお!!てめえ、ベータあっ!!そうはさせるかぁああああ!!」


 
だっ!!ぴょーん。


 明彦:

 「かっ・・・神田君!?すごい!神田君も人間の限界を超越した根性ジャンプを!!」



 
突如山の周りに強風が吹き荒れ横風にあおられた。


 神田:

 
うおっ!?なんだこの風ぇええ!?ああああ、もう少しで届きそうだったのにィィィィィ・・・・


 
ぴゅー。


 明彦:

 「ああああーっ!!か、神田君ーっ!!神田君が谷に落ちたぁーっ!!
(汗)





―――山の頂上



魔族データ その3

兄・アイアン(1本角)と、弟・ブロンズ(2本角)

桁外れのパワーと、桁外れの知性の無さを誇る。

パワーファイターとしての実力はかなりのものだが、

下品で醜悪なため、スピネルには嫌われている。



 アイアン:

 「ぐふへへへへ。人間どもめ、まさかここに魔界と繋がるワープゲートがあるとは夢にも思うまい。」



 ブロンズ:

 「ぐふふふふ。しかし、兄者。良かったのか?スピネル様の許しも得ず勝手に来ちまって。」


 アイアン:

 「なぁに、要はとるこいしをぶっ殺しちまえばいいんだろ?手柄をたてりゃ何も問題ね―って。」



 ブロンズ:

 「それもそうだな。兄者、もちろん邪魔する人間どもがいたら殺っちまっていいんだろ?」


 アイアン:

 「そりゃ、しょうがねーだろう。任務達成のためにはやむを得んわな。ぐへへへへ。」



 ブロンズ:

 「たくさん邪魔が入るといいなぁ。ぐひひひひ。」


 アイアン:

 「さて、じゃあ、山を下りて人間どもを・・・いや、とるこいしをブチ殺しにいくか。」



 ブロンズ:

 「ん!?あ、兄者!なにか人間どもがこっちに向かってのぼってきやがるぞ!!」


 アイアン:

 「なにぃ?まさか、このゲートが早くも察知されたのか?まあいい。血に飢えてたところだ。とるこいし撲殺の前哨戦と行こうぜ。」



 ブロンズ:

 「そりゃあいい。うずうずしてきたぜ、がはははは!!」






 ベータ:

 「お、思ったよりずっと険しいな・・・。とてもハイキング向きの山じゃねえ・・・、まさかこんな崖があるとは思いもしなかったぞ。」



 美咲:

 「もうギブアップか?だらしねーな。」


 ベータ:

 「ちっ・・・!ったく、全然可愛げのねえ女だな!フツーなら

『あーん、あたしもう歩けなーい!』

『はっはっは、もう疲れたのかい?よし、じゃあオレがおぶってやるよ。』

『きゃー、頼もしいー


 とかいうイベントが起こるもんじゃないんかい!」



 美咲:

 「脳みそウジわいてんじゃねーかオマエ。」


 ベータ:

 「ん?なんか飛んできた!?」



 とるこ:

 
「ぎゃーっ!誰かキャッチしてくれ!!」


 美咲:

 「よっと。」


 
がしっ。


 とるこ:

 「ふうー、助かった。死ぬところだったぜ・・。」



 ベータ:

 「こんなトコで何してんだお前。」



 とるこ:

 「空を飛んで頂上に向かおうとしたら、風に負けて飛ばされた。」



 美咲:

 「お前、この強風の中を飛ぼうとしたのか。」


 ベータ:

 「アホですな。」



 とるこ:

 
「うるせーっ!いけると思ったんだよ!」


 美咲:

 「しかし、意外な奴が鳴隼を助けにきたもんだ。」


 とるこ:

 「なッ!アホか!そんなんじゃねーわい!そのケロリ花とかいうのが、万能薬なら金儲けになるなと思っただけだ!誰があんな腐れ外道を!」



 美咲:

 「照れるな照れるな。」


 とるこ:

 
「うがーっ!!」


 ベータ:

 「お前一人か?」



 とるこ:

 「うべべが先に進んでるはずだ。あいつは飛ぼうとせずに歩いて登ってやがる。」



 美咲:

 「当たり前だろ。」


 ベータ:

 「アイツは普段から走りこんでたし、山登りなんてお手のモンじゃねえ?」



 とるこ:

 「とにかく先に行くぞ!うべべに先を越されるなんてオレのプライドが許さん!おらーっ、モタモタしてんじゃねーっ!」



 美咲:

 「はいはい、クソチビが心配だもんな。」


 とるこ:

 「ちがーう!あのハナタレにケロリ花独占されるだろが―ッ!!」



 ベータ:

 「なははー、照れるな照れるな。」


 とるこ:

 
「ムカつく、こいつらーっ!!」





 ためごろう:

 「ふえーん、寒いですぅー。怖いですぅー。」


 ベータ:

 「・・・あんなところで硬直してる奴がいるぞ。」



 美咲:

 「まあ、アイツが来てる気はしてた。」



 ためごろう:

 「あ、ちょうどいいところに!助けてくださいよぉー。こんなに風が強くちゃ、飛ぶ事もできないし、むしろ翼が風をまともに受けちゃって余計に危ないですぅー!」


 ベータ:

 「お、さすがに飛ぼうとはしなかったか。」



 ためごろう:

 「冗談じゃないですよぉ。こんな風の中で飛ぶなんて自殺行為じゃないですかぁ。ルージュちゃん、そこまでおバカさんじゃありませぇん。」


 とるこ(←飛んだ奴)

 
「うるせーっ!!」


 ためごろう:

 「!!?な、なんで怒ってるんですかぁ!?」


 美咲:

 
「とにかくオレが行くまで、そこ動くな。支えてやっから。」





 ベータ:

 「やれやれ、やっと安全で広いところに出たぜ。」



 ためごろう:

 「怖かったですぅ〜!」


 とるこ:

 「でも、帰りにまたあそこ通らなきゃいけねーんだよな・・・。」



 ためごろう:

 「ふえ〜ん!」


 美咲:

 「反対側のふもとへの道は安全かもしれねーじゃん。」



 ためごろう:

 「そうだといいんですけどぉ〜。」


 うべべ:

 「あ、みんな!とるこも!無事だったズラか!?」



 とるこ:

 「けけけーっ!このオレ様があんなぐらいで死ぬかよ!」



 ベータ:

 「オレらがいなきゃ死んでたけどな。」



 うべべ:

 「そ、そうだ!この先にとんでもないものが!!」



 とるこ:

 「とんでもないもの?」



 うべべ:

 「そうズラ!この先の木ズラ!!」



 ベータ:

 「おいおい、そんなに引っ張るなよ!」




 すまん、もう一回続くわ。こんなに長くなるとは思わんかった。





1/28 (水)



 眉毛風邪、完結編。



 とるこ:

 
「お、オニキス!?」


 ベータ:

 「うわ・・・、こりゃ酷ぇ。」



 
木には、半殺し・・・いや、ほとんど全殺しの状態で木にぶら下げられてる藤次郎とオニキスの無残な姿があった。


 美咲:

 「藤次郎はともかく、オニキスがここまでボコボコにされるとは。」


 ベータ:

 「くそっ、迂闊だった。この山、さっきから何やら不気味な気配をうすうす感じてたんだ。とんでもねえ化け物がいるかもしんねー。」



 ためごろう:

 「ええーっ!そうなんですかぁ!?」



 とるこ:

 「そ、そういう事は先に言えよ!分かってたら引き返してたのに!」



 ベータ:

 「すまん。てっきり山の持ってるエナジーかなんかだと思ってたんだ。頂上に近づくにつれてハッキリしてきた。これは明らかに魔物の気配だ。」



 うべべ:

 「化け物ズラか・・・。」



 とるこ:

 「じゃあ これは、この山への侵入者に対する見せしめってやつか?」



 美咲:

 「とにかく ためごろう。この二人治療してやれ。」


 ためごろう:

 「あ、はいー!そーれ、エンゼルフェザー!」



 
ためごろうの神力で二人の傷が全快した。


 藤次郎:

 「うーん・・・。」



 オニキス:

 「はっ!?こ、ここは!?」



 ベータ:

 「気がついたか。」



 とるこ:

 「おい、オニキス!一体何があったんだ!」



 オニキス:

 「いや・・・、オレにもよく分からん。ただ・・・何者かに襲撃された・・・気がする。」



 ためごろう:

 「魔物ですぅ!きっと、この山の魔物に襲われたんですよォ!!」



 藤次郎:

 「信じられねースピードとパワーだったぜ・・・。何が起こったか分からねーうちに意識が闇の中に消えちまった。」



 オニキス:

 「情けない話だが、相手の姿すら確認が出来なかった・・・。悔しいが、不意打ちじゃなかったとしても、オレがとても歯の立つ相手ではなかったろう。くそっ、魔界のエリートであるこのオレが何てザマだ・・・!」



 うべべ:

 「ぶるる・・・。オニキスでも歯がたたねぇ相手ズラか・・・。」



 美咲:

 「けど、お前ら見直したぜ。こう言っちゃ悪いけど、まさかお前らが危険を冒してまで山に登るとは思ってなかったからさ。」


 ためごろう:

 「そうですねぇー。藤次郎さんやオニキスさんでもいいところあるんですねぇ。」



 藤次郎:

 「あ?山ぁ?何のことだ?」



 オニキス:

 「オレたちは山に入った覚えなんかないぞ?」



 とるこ:

 「・・・・・・・・・?」



 うべべ:

 「どういうことズラ?」



 ベータ:

 「かえーそうに・・・。記憶が飛ぶほどにぶん殴られたんだな。」



 美咲:

 「安心しな。仇はうってやるぜ。」


 
ぴくっ


 美咲:

 「・・・・・・!!誰だ!」


 とるこ:

 「ど、どーした!?」



 美咲:

 「いや、何か人の気配を感じたんだが・・・。」


 うべべ:

 「だれもいないズラよ?」



 ベータ:

 「実はお前が一番びびってんじゃないのぉ〜?」



 美咲:

 「バカ。んなわけねーだろ。でも、っかしーな〜・・・。確かに気配を感じたんだがな・・・。」






 ブロンズ:

 「来やがった、来やがった。ひいふうみい・・・男2人、女2人、ガキが3人てトコだな。」


 アイアン:

 「ちっ、つまんねぇ相手だな。おい、ブロンズ、おめー行ってこいや。」



 ブロンズ:

 「いいのか、兄者!?」


 アイアン:

 「ああ、好きなだけ暴れてこい。ザコすぎて相手する気にもならねえ。」



 ブロンズ:

 「ひゃっほー!さすが兄者!行ってくるぜ!!」






 ベータ:

 「この気配・・・、来るぞ!多分噂の化け物だ!」



 とるこ:

 「マジで!?」



 藤次郎:

 「ひいっ!」



 
ずずぅーん!!


 ブロンズ:

 
「ぐはははは!」


 ためごろう:

 「キャーっ!怖いですぅ!!」


 ブロンズ:

 「何しにきたか知らねーが、運の悪ィやつらだなぁ。わざわざ死ににくるとはよ!!」



 とるこ:

 「コイツ、魔族だぞ!」



 ブロンズ:

 「ん!?
おほーっ!!


 うべべ:

 「?」



 ブロンズ:

 「なんだなんだぁ?ただのゴミどもかと思いきや、いるじゃねーかよ、王子様が!こりゃ、ツいてるぜぇ!!」



 とるこ:

 「
煤i○□○;)ま、まさか、てめー、スピネルの刺客か!!」


 ブロンズ:

 「ぐはははは!まあ、そーゆーこった!安心しろや、てめーは最後にゆっくりいたぶってやるからよォ。」



 とるこ:

 「くっ・・・。畜生、コイツこないだの爆弾ヤローなんざ問題にならねえレベルだ!」



 ブロンズ:

 「さあさあさあ、どいつからぶっ殺してやろうかなぁ。」



 美咲:

 「おい。」



 ブロンズ:

 「ああ?なんだ、てめえから殺してほしいのか?」



 美咲:

 「もういいだろ、遺言は。」



 ブロンズ:

 
「なにぃ!?」


 ベータ:

 「なーはははー!ここは愛と正義の大勇者に任せなさい!」



 ブロンズ:

 「なめやがって!死にやがれーっ!!」



 ベータ:

 「おりゃーっ!気合のベータ君ラリアットーっ!!」



 ブロンズ:

 
「げべばーっ!?」


 
ブロンズはお星様になりました。


 ためごろう:

 「わぁい!すごいですぅ!」


 とるこ:

 「ただのスケベじゃなかったのか!」



 ベータ:

 「なははは!鬼神のように強いスケベだ!」



 オニキス:

 「それ、一番タチ悪くないか。」



 うべべ:

 「女性の敵ズラ。」




 美咲:

 「・・・なぁ、ホントにコイツか?」


 ベータ:

 「ん、何が?」



 美咲:

 「オニキスよりコイツが仮に強かったとしても、とても姿も捉えられんほど圧倒的にやられる強さとは思えんぞ。」


 オニキス:

 「・・・そういや、コイツはそれほど強いとは感じなかったな。」



 藤次郎:

 「ってことは、どういうことでい?」



 美咲:

 「まだ黒幕がいる可能性が高い。安心するのは早いってこと。」


 ためごろう:

 「ふえーん!まだいるんですかぁ〜!?」



 ベータ:

 「頂上まであと少し、気を張り詰めていこうぜ。」






―――頂上


 ベータ:

 「いよいよ頂上だな。」



 美咲:

 「まあ、オレとベータはいいとして、お前らは警戒してな。」


 うべべ:

 「はいズラ。」



 ためごろう:

 「怖いですぅ。」



 とるこ:

 「RPGでボスキャラに挑む心境だぜ。」



 ベータ:

 「よっしゃ行くぞ!」



 
そして頂上に上りきった一行が目にしたものは・・・。


 クイーン:

 「遅かったな。フン。」



 美咲:

 「あれ?」


 クイーン:

 「何だ、人の顔をジロジロと。」



 ベータ:

 「ここに化け物おらんかった?」



 クイーン:

 「化け物?・・・ああ、このゴミの事か。」



 
ガッ!←足蹴


 アイアン:

 「お、俺たちって一体・・・
ガクッ


 藤次郎:

 「あら。」



 ためごろう:

 「わぁい、クイーンさんがやっつけちゃったんですねぇ。」



 とるこ:

 「なんか拍子抜けしちまったな。」


 うべべ:

 「そもそも冷静に考えたら、この3人が揃ってるのに危険なんてあるわけ無かったズラ。」



 クイーン:

 「何の話か知らんが、それより例の花を持っていかねばならんのだろう。急がんでいいのか?」



 美咲:

 「おっと、そうだった。」


 藤次郎:

 「なんでぇ、おめーらマジであのチビ助ける気かよ〜。」



 オニキス:

 「まったくお人よしな連中だ・・・。」



 うべべ:

 「そういうオニキスたちだって来てるじゃねーズラか。」



 藤次郎:

 「あのな。何度も言ってんだろ。オレらは山に入った記憶すらねーんだ!」



 ためごろう:

 「ああ、もう喧嘩しちゃだめですぅ。どれがケロリ花か分からないから、片っ端からつんでいっちゃいましょぉ〜。ホラホラ二人とも、遊んでちゃメッですよぉ〜。」



 オニキス:

 「なにーっ!?何でオレが鳴隼なんぞのために!!」



 美咲:

 「ぶつくさ言ってねーで手伝え。」


 藤次郎:

 「ちょほ〜。」




 ベータ:

 「片っ端から摘み取ったら凄い量になったな。」



 クイーン:

 「これだけあれば、どれかは当たるだろう。あの医者に見せれば分かるだろうよ。」






 美咲:

 「おい、クソチビ。生きてるか?」


 クイーン:

 「どれが言っていた花か分からんから、手当たり次第取ってきた。」



 フェンフェン:

 「おおっ!まさか本当にもって帰ってくるとは!いやー、助かった!鳴隼さんの言ったとおりだ!」



全員:

 「へ?」



 フェンフェン:

 「いやー、あのウペペペペサンケ山の頂上にある花は、どれもこれも最高の漢方ばかりでしてな。売ればいい金になるのですよ。ですが、私のよーな凡人が登るにはあまりに危険な山でして、鳴隼さんに一芝居打ってもらったわけなのですよ。」



全員:

 
「は?」


 フェンフェン:

 「じゃ、こちらのアタッシュケースは約束のお代で。」



 鳴隼:

 「毎度。」



 フェンフェン:

 「じゃ、失礼しまーす。」



 
摘んできた花を車に詰めて立ち去るフェンフェンと、石化したままそれを見送る一行。


 ベータ:

 「・・・・・・ど、どういうことだ、こりゃ・・・。」


 鳴隼:

 「見たままさ。」



 美咲:

 「てめー、病気はどうした。」


 鳴隼:

 「眉毛風邪なんて病気あるわけないだろ。」



全員:

 「・・・・・・・・・ぴしっ・・・」
←石化にヒビが入った音


 エープ:

 「だから、行く必要なんかないって言ったじゃん。あたしの白魔法や、ためごろうのエンゼルフェザーが効かない病気なんて聞いたこと無いよ。」



 明美:

 「よーするにー、あんた達全員騙されたってことよ。」



 ・
 ・
 ・。



 とるこ:

 
「うがーっ!仮病か、このやろうーっ!!」


 ベータ:

 「エープ!知ってたなら、なんでそれを言わねーんだよっ!!」



 エープ:

 「言おうとしたのに出てっちゃったんだろ!」



 クイーン:

 「では、あの時、熱があったのは・・・。」



 鳴隼:

 「あんなの、気をちょっとコントロールすれば簡単にできることさ。」



 ためごろう:

 「ひょ、ひょっとして、さっきの人もお医者さんじゃないんじゃ・・・。」



 鳴隼:

 「鋭いねぇ。アレはただの鑑定士さ。」



 オニキス:

 「
煤i○□○;)はっ!ひょ、ひょっとしてオレたちをボコボコにしたのは貴様の仕返しか!?」


 鳴隼:

 「今頃気付いたのかい、このうすらバカ。」



 藤次郎:

 「ど、どーりでとんでもなく強えと思ったーっ!!」



 鳴隼:

 「生きたまま山の動物達のエサにしてやるつもりで、わざわざ人気の無い、山の険阻な側に吊るしておいたのに、まさか美咲達がそっちから登ってくるとはね。やっぱり回りくどい事せずに殺しとくんだったよ。」



 藤次郎
 &  オニキス

 
「ぞぞ〜っ・・・!」


 美咲:

 「オニキスたち発見した時、オレが感じた気配はクソチビだったのか。」


 鳴隼:

 「そういうこと。」



全員:

 「(なんて野郎だ・・・。)」



 鳴隼:

 「まあ、礼ぐらいは言っとくよ。謝々。」



 クイーン:

 「いかん。ここまで来ると、かえって怒る気にもならん。帰って寝る・・・。」



 ためごろう:

 「右に同じですぅ。」



 とるこ:

 「もう本当に病気になっても絶対に助けてやらねーからな!」



 鳴隼:

 「あたしは気で常に自己治癒・殺菌してるから、病気になんかなりようがないんだよ。」



 とるこ:

 
「むがーっ!!」


 うべべ:

 「こんな人助けようと思ったオラ達がバカだったズラ。」



 ベータ:

 
「だーっ!誰かどうにかしてくれ、このムカムカーっ!」


 エープ:

 「ま、まあまあ・・・。カレー作っておいたから・・・。」



 藤次郎:

 
「ストレスだらけだ、くそ―――っっっ!!」


 鳴隼:

 「あー、心地いい罵声だねぇ。気分がスーッとするよ。」



 オニキス:

 
「誰か、マジでコイツ殺せって!!」


 明美:

 「できたら誰も苦労しないわよ。」



 美咲:

 「ん?そういや、何か大事な事忘れてるよーな。」





 明彦:

 「黒星山さーん!神田くーん!今レスキュー隊が必死で救助活動してるからねーっ!もう少しの辛抱だよーッ!!あーっ!それにしても美咲さん、いつバイク取りにくるのーっ!?」



 翌日、夜風に延々とさらされたこの三人が結局風邪にかかったとか、かからなかったとか。





1/29 (木)



 親がずーっと使ってた保温機、約年季20年、がついに寿命を迎えてしまったので、新しいのを買いに行った。

 保温機がうちの場合ふたつ並べておいてあって、1リットルサイズと、1,5リットルサイズがあり、その1,5リットルの方が壊れたのぢゃが。

 いざ、買いに行ってみると、1,8リットルサイズと2,7リットルサイズが置いてあった。

 もちろん、サイズの近い方を買うべきなんだけど、人間の目というのは不思議なものでして。

 いつも、小さい1リットルサイズと並べて見ているものだから、大きいイメージが強いわけですよ、1,5リットルサイズの壊れた保温機が。

 なもんで、どうしても本当は壊れた保温機より大きいはずの1、8リットルサイズが隣りの特大サイズ2、7リットルのせいで、やたら小さく見えるわけですわ。

 結局マジでどっちが求めてる大きさか分からなくなったので、わざわざ電気屋から家に壊れた保温機のカマを比較のために取りに戻る羽目になってしまった。



―――これから、どういう事がいいたいのかというと。

 要するに人間の目なんてものは、周囲のものの影響次第ではどんな風にも見えてしまうということである。

 逆にこれを利用すれば大きな効果が得られるかもしれん。

 つまり。






 こうすれば、美咲が絶世の美女に見えるということだな。

 いかん、気分悪くなってきた。おやすみ。
 

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