もんちっち劇場






10/13 (木)



 

 氷雨:

 「どうした吹雪。何か考え事か。」



 吹雪:

 「…この武者修行を終え、元の時代に戻った時のことを考えていた。」


 氷雨:

 「無論、天下の戦乱を治めるべく立ち上がるのだろう。腕が鳴るな。」



 吹雪:

 「もちろんそのつもりだ、だが・・・。」


 氷雨:

 「だが・・・、どうした?まさか、戦が恐ろしくなったとでも言うのではあるまいな。」



 吹雪:

 「そのまさかだ。この時代のいろんなものに触れているうちに、ふと戦死する自分の姿を想像して気が重くなった。」


 氷雨:

 「やんぬるかな!このような軟弱な言葉を貴様の口から聞かされようとは!かくなる上は我らの付き合いも今日限り。」



 吹雪:

 「そう急くな。死ぬのが恐ろしいという意味ではない。まして敵兵に恐怖しているわけでもない。私が懸念しているのは、あくまで死に様の話だ。」


 氷雨:

 「死に様?…ああ、そうか。戦死は合戦の習いとはいえ、たしかに犬死には避けたいものだな。なるほど。」



 吹雪:

 「それもある。」


 氷雨:

 「まだあるのか?」



 吹雪:

 「どのように死ぬのか、死に方そのものが問題なのだ。」


 氷雨:

 「というと?」



 吹雪:

 「たとえば、かつての中国、「金」の完顔陳和尚将軍とか…。」


 氷雨:

 「和尚で将軍なのか?」



 吹雪:

 「違う違う!れっきとした名前だ!金の名将・完顔陳和尚(かんがん・ちんわしょう)、知らぬのか?勉強不足だぞ。」


 氷雨:

 「すまん。返す言葉もない。して、その人物はいかにして死んだのだ?」



 吹雪:

 「蒙古(モンゴル)の軍に徹底抗戦の末 捕虜となり、故国を裏切って部下になれと誘われても毅然と拒否し、その結果口を裂かれたり手足を折られるなどの凄惨な拷問を受けながらも絶命するその瞬間まで、祖国への忠誠を叫びながら死んでいかれた。」


 氷雨:

 「なんと・・・それは・・・。まさに壮士と言うべき人物。かの大陸にかような英傑が居ったとは。」



 吹雪:

 「他にも、日本では湊川の戦いに敗れ切腹の際に、弟と共に『極楽など望まぬ。7度生まれ変わっても人間として生を受け、此度と同じように朝敵と戦う』と誓った楠木正成公。

 あるいは一ノ谷で熊谷直実に討たれる際に『名は名乗らぬが、余人に我が首を見せて名を問うてみよ。見知った者もあろう。汝のためには良き首ぞ。』と潔く散った平敦盛公。」


 氷雨:

 「なるほど。死に際を人として美しく飾りたい、ということか。

 要するに信念を持って毎日を生きていれば済む話だ。お前になら容易いと思うがな。」



 吹雪:

 「ところが、世の中そう簡単にはいかぬのだ。悲劇的な例もある。」


 氷雨:

 「?」



 吹雪:

 「とるこ殿のやっていたゲームの話になるのだが、『ドラゴンクエスト2』というゲームのムーンブルクという国の王の最期がまさにソレで。」


 氷雨:

 「ふむ?」



 吹雪:

 「敵に城を攻め込まれ進退窮まった時、一人娘を安全な後方に隠し、自らは魔物相手に奮戦して散った人物でな。」


 氷雨:

 「なんだ。その王も素晴らしい人物ではないか。」



 吹雪:

 「その通り、見上げた人物だ。なのに彼の死にざまは、そのゲームの愛好家から物笑いの種になってしまっているのだ。」


 氷雨:

 「どういうことだ。そこまでお膳立てしておいて命乞いでもしてしまったのか。それとも敵前逃亡を図ったのか。あるいは、あまりに弱すぎたとか?」



 吹雪:

 「いや違う。一人で多くの魔物を倒したものの、背後から不意打ちを受けて焼き殺された。」


 氷雨:

 「では何故?落ち度など見当たらんぞ。」



 吹雪:

 「…断末魔の…悲鳴が『ぎょえーーっっ!!』だったのだ……。」


 
氷雨:

 「ぎょえーーっっ!?」



 吹雪:

 「ぎょえーーっっ。」


 氷雨:

 「………っ…!…失礼。た、たしかにそれは…ちょっと笑ってしまうかもしれん…。」



 吹雪:

 「そうだろう。ただ臨終の際に残念な悲鳴をあげてしまっただけで、それまでの人生がすべて否定されてしまうのだ。恐ろしい!恐ろしい…!」


 氷雨:

 「うむ…、信念の元に数十年の人生を懸命に生きぬき、ついに来た臨終の時をぎょえーーっっ!!で締めくくるのは死んでも死にきれんな。」



 吹雪:

 「先ほども、この時代のいろんなものに触れた、と言っただろう。さっき、『北斗の拳』を読んでしまったのだ。」


 氷雨:

 「あ。」



 吹雪:

 「人生の最期を、『ひでぶ』『あべし』『たわば』『あわびゅ』『うわらば』『ちにゃ』で締めくくる者たちを見ているうちに、私も変な声を出して無様な恰好で死んでしまわないかと思ったら不安で不安で…!!

 …いやだ!私はあのように人生を終わりたくない!」


 氷雨:

 「………秘孔さえ突かれなければ大丈夫だと思うぞ。」






 管理者:

 「ちなみにワシの場合は『おちょろぺっぺ』と言い残して死んだんじゃ。情けなくて恥ずかしくてのぅ。」



 吹雪:

 「成仏して下さいませ。」





10/21 (金)



 オニキス:

 「ここはワーグナーだろ、常識的に考えて。」



 うべべ:

 「シンプルにバッハが良いと思うズラ。」



 アンバー:

 「これだから素人は…。ベートーベンこそが至高。」



 とるこ:

 「どう考えてもドヴォルザークしかありえんだろ!」



 管理者:

 「なんだなんだチビっ子ども。クラシックに目覚めたのか?」



 美咲:

 「ははは、無い無い。絶対にそれは無い。」


 オニキス:

 「おお、ちょうどいい所に二人も来てくれた。」



 うべべ:

 「ここは公平に第三者の意見を聞こうズラ。」



 とるこ:

 「聞いてのとおり、今オレ達はワーグナー、バッハ、ベートーベン、ドヴォルザークと意見が割れている。」



 管理者:

 「誰の楽曲が一番すぐれているか?」



 とるこ:

 「いや、どの名前が一番強そうでカッコいいかだ!この勝負にデュエルマスターズのレジェンドのカードを賭けてんだよ。」



 管理者:

 「偉人の名前で遊ぶな!!」



 美咲:

 「こんなこったろうと思ったぜ。」


 とるこ:

 「絶対ドヴォルザークだよな!?これより迫力と力強さで右に出る名前があるか!?」



 オニキス:

 「だからワーグナーだと言っとろうが!こういうのは気品も大事なんだ!」



 アンバー:

 「気品、力強さ、語呂の良さ。どれをとってもベートーベンがチャンピオンにふさわしい!!」



 うべべ:

 「バッハ!わずか3音に集約された力強さがみんなには伝わらないズラか!?」



 とるこ:

 「とまあ、こんな感じでさっきから平行線だ。ここはひとつ、バシッと決めてくれよ。」



 管理者:

 「ええ〜。どれ推しても他3人から恨まれるじゃん…。」



 美咲:

 「そんなもんメンデルスゾーンが最強だろ。」


 とるこ うべべ オニキス アンバー

 
「メンデルスゾーン!?」


 とるこ:

 「何それ!?すげえ!やべえ!カッコいい!!」



 アンバー:

 「なんという必殺技のような名前…!」



 オニキス:

 「負けた。思わずうなずいてしまった…。」



 うべべ:

 「メンデルスゾーン!なんだか口にしたくなる名前ズラね。メンデルスゾーン!!」



 とるこ:

 「くっそー、しかたねえ!優勝した美咲にオレのミラダンテくれてやる!!持ってけチクショー!」



 美咲:

 「いらねーよ。貰ってどうすんだよ。」




 個人的にはビバルディも捨てがたいと思うんよ。





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